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ここではタロさんがガラス屋さん家業のゆえ、一般に建物などに使われている
板ガラスについてのちょっとした豆知識のコーナーです。
何かの参考になれば幸いです。
板ガラスの歴史・製法・種類
1) ガラスの歴史
透明・燃えない、木などの有機材料とは比較にならない耐久性、など優れた性質をもつ板ガラスは建築物になくてはならない材料で
あると言えます。ガラスが建築に用いられた歴史は古く、され以前にも、宝石と同じように装飾品として、あるいは食器などのうつわとして
用いられていました。建築の素材としての板ガラスは、「内と外を遮断しながら、光線や視線を通すもの」として他にかけがえのない、
唯一の貴重な材料といえます。
(1) 古代のガラス
ガラスが、いつどこで生まれたのかについては、まだ解き明かされていませんが、一般には紀元前数千年頃のメソポタミアかエジプト
だとされています。そして、ガラスが比較的普及するようになったのは今から3500年くらい前からだろうとされていますが、当時は宝石と
同じように高価な物でした。その頃のガラスは、ねばっこいガラス素地を粘土で作った型に押しつける型押し法や、布袋に砂を詰めた芯に
溶けた糸状のガラスを巻きつけたり、芯を溶けたガラスの中につけて、冷えてから砂の芯を抜く砂芯法で成型されていました。
紀元前30年頃から、ローマ帝国が分裂する395年までの間に、画期的なガラスの成型法が生まれました。それは、吹きガラス技法
呼ばれるもので、吹き管の先に溶けたガラスをつけて風船のようにふくらませて成型する方法です。これによって、さまざまの形や大きさの
ガラス製品を比較的手軽に作ることが可能になりました。この吹きガラス技法は、基本的なガラス成型法として現在にも受け継がれています。
そして、ローマ帝国がその勢力を広げるとともに、ガラス製造技術は全ヨーロッパに広がっていきました。一方、建物との関係をみると、
この頃から、半透明の天然石膏や雲母の板に加えて、ガラスも窓材料として使われはじめたようです。
(2) 中世のガラス
ローマ帝国の没落後、ガラス職人達はシリヤとビザンチンに集中し、金属化合物を混入してガラスを着色する技術が進み、これが後の
ステンドグラスの開花につながりました。やがて、ヴェネチアがガラス製造の中心地となり、そこで発達した技術がさらにヨーロッパ全域に
広がっていきました。中世の教会や城にはステンドグラスや鏡がさかんに用いられていますが、こうした建築需要が中世のガラス工業を
うながした大きな要となりました。ガラスを窓に使用するためには、平らな板ガラスが必要となりますが、この時期に吹きガラス技法によって
ふくらましたガラスを回転させ、遠心力によって平らにするクラウン法が開発されました。この頃から、ガラスは工芸品から実用品へと
広がりを見せ、工業としての基盤を固めていきました。
(3) 近代のガラス
建築分野でのガラスの仕様が広まるにつれて、より平滑でより大きいガラスが求められるようになってきました。技術的にも、17世紀末頃に
発明された手吹き円筒法が、1800年頃から、板ガラス製法の中心となり、従来に比べて平らで大きく、しかもより薄い板ガラスが作られる
ようになりました。また、18世紀後半に起こった産業革命は、ガラス工業にも大きな革新をもたらしました。たとえば、蓄熱式加熱法
発明によって、容易に高温が得られるようになり、ガラスを溶解する技術が飛躍的に進歩しました。1851年に、初めての万国博がロンドンで
開催されましたが、この時のメインパビリオンとして、水晶宮(クリスタル・パレス)と名付けられた、ガラスと鉄による巨大な建物が
作られています。この一大デモンストレーションが、多くの人々に建物に使用される板ガラスの効果を強く印象付けることに
なりました。
(4) 現代のガラス
1900年代に入ると、溶解ガラスから直接ガラスを引き上げて成形するフルコール式、ピッツバーグ式、コルバーン式、などの製造法が
生まれ大量生産が可能になりました。さらに現在の型板ガラスや網入りガラスに用いられているロールアウト式が出現しました。また、より
大きくという要求と、より火積み歪のない平滑な面を作り出そうという欲求は強く、出来あがった板ガラスの面を研磨する磨き板ガラス
技術が一層向上する一方、フロート式と呼ばれる革新的な技術が誕生しました。フロート式とは、溶解したガラスを、溶解金属の上に
浮かべて製板する方法で、歪の無い完全な平滑面が得られるので、改めて研磨する必要がありません。
そして、機能・性能に対する要求の多様化に応じて、酔うよう様ようなガラスが生み出され、建物との関わりは一層強くなってきました。
2) ガラスの製法
(1) 板ガラスの主原料
珪砂・ソーダ灰・石灰石が三大主原料で、その他少量の成分が含まれます。各成分の割合を適正に保つことが、板ガラス製造に大変
重要で各々の原料は厳選されたものを使用します。
a、 珪酸(SiO2):ガラスの骨格となる成分で、板ガラス原料の内70〜72%を占める主成分。
b、 ソーダ(Na2O):溶解の際、融点を下げる働きをする成分で珪砂に次いで原料の12〜16%を占める。
c、 石灰(CaO):石灰は、高温でガラスの粘性を良くする成分で、原料の中約12%を占める重要な成分。
d、 マグネシヤ(MgO):粘性の温度による変化を和らげたり、失透性(結晶化)を低減する性質がある。
(2) 板ガラスの基本的製法
ガラスをつくるには、ガラス製品がそれぞれの種類、用途によって成分が異なるので、まず@成分(組成)を決め、次にAその成分に応じた
原料を選び、Bこれらを混ぜ合わせ(原料の調合)、C溶融、ガラス化し、D最高温度(1500〜1600度)に熱して清澄作業(不溶解物を
完全に除き、泡を追い出す)を行い、E素地締めという作業温度(1200度)まで冷却し、残った泡をガラス中に溶かし込み成形、F徐冷釜に
いれ熱を加えて徐冷、G十分冷めてから釜から取り出し、H選別、I検査、J包装、となります。
3) 板ガラスの種類
(1) フロート板ガラス
ガラスの基本的な特性である透視性と採光性にすぐれた、無色透明板ガラス。(一般的にいう、透明ガラスのことです。)
@ 特性
1、 フロート板ガラスは高い平面精度を有し、すぐれた透視像、反射像が得られます。
2、 フロート板ガラスは、厚く、大寸法のガラスが製造できます。(通常では、厚さ2〜19mm、最大幅約3mで帯状に長く造ることが
   できますが、輸送上等の理由で、長さは、約10mを限度としています。)
A 品種と仕様
1、 フロート板ガラスは、2・3・4・5・6・8・10・12・15・19mmまで10種類の厚みが作られています。また、製造最大寸法も厚みによって
   異なります。
2、 ガラスの1u当りの重量計算法は、厚み(mm)*面積(u)*2.5kg(定数) で求められます。
   例えば、10mm厚で、縦1m*横1m(面積1u)のガラスの場合の重量は、10(厚)*1(u)*2.5kg(定数)=250kgとなります。
※ すり板ガラス
   すり板ガラスは透明板ガラスの片面を硅砂、金剛砂と金属ブラシ等で不透明にした加工ガラス。(一般的に、くもりガラスと呼ばれて
   いる物のことです。) 1.9・3・5mmの3種類の板厚があります。
(3) 型板ガラス
ガラスの片面に美しい型模様を掘り込んだもので、光をやわらかく拡散し、光線は通過するが、視界は適度にさえぎる特徴を持っています。
@ 特性
1、 光線は通し、視界をさえぎることで、プライバシーを守り、光をやわらかく拡散することで、まぶしさを防ぐ防眩効果があります。
2、 型模様があるにもかかわらず、可視光線や日射の透過率は、透明なガラスとあまり変わりません。
(4) 網入・線入板ガラス
ガラスの中に金属の網あるいは線を入れたものです。この網や線が、ガラスの破れた場合の破片の落下、脱落を防ぐ役目を果たします。
また一般の板ガラスに比較して衝撃に対しても、破片が飛散、脱落することが少なく、安全性が高いと言えます。
@ 特性
1、 網入ガラスは、防火性を認められるガラスであり、従って建築基準法に限定される乙種防火戸に用いることのできるガラスです。
   (但し、線入ガラスは認められていない。)
2、 飛散防止効果を持ち、地震や台風の際の飛来物、更には爆風等で万が一ガラスが破損した場合でも、金属の網(線)が破片の
   飛散を防ぐか、ごく少なく押さえることによって、破片による人体等への傷害を防ぐ効果を持っています。
   (なお、この効果は線入板ガラスよりも、網入板ガラスの方が大きい。)
3、 金属の網や線が露出するエッジ部の強度は、普通のガラスよりやや低下します。従って、一般的には、熱割れのおそれが大きく
   なります。
A 品種と仕様
1、 網や線の入れ方には3とおりのパターンがあり、網入には菱形とクロス形(ます目)、線入には平行線のみのタイプがあります。
2、 透明タイプと型板タイプ、更にはガラス素地に熱線吸収板ガラスを用いた色のついたタイプがあります。
3、 厚みは、6.8mmと10mmの2種類だけ。ただし、クロス形はすべて6.8mmだけ。熱線吸収板ガラスの網入・線入は、6.8mmだけと
   なります。
(4) 熱線吸収板ガラス
透明な板ガラスの原料の中に、ニッケル、コバルト、鉄、セレン等を入れ、ブルー、ブロンズ、グレー等の色を付けたもので、太陽熱の
吸収を高める性質を付加したガラスです。
@ 特性
1、 熱線の吸収作用により、太陽輻射熱を30〜40%吸収し、室内に流入する熱量を減らし、冷房負荷を軽減する省エネルギー効果
   あります。
2、 現在、ブルー、グレー、ブロンズ、グリーンの4色があるので建物の表情を豊にする効果があり、色が付いていることで、室内に対して
   防眩効果もあります。
A 品種と仕様
1、 厚みは、3・5・6・8・10・12・15・6.8(網・線入)mmの8種類ありますが、色によってはない厚さのものもあります。
(5) 熱線反射ガラス
フロート板ガラスの製造工程の中で片側表面に、薄い金属酸化膜を、特殊な方法でコートした板ガラスです。また、金属膜による
ミラー効果(鏡面効果)によって、更には、素板の違いによる色調によって、高い意匠性を持った板ガラスです。ゆえに、外観も鏡面に
近く、空や周囲の景色を映し、視覚的には美しい建物をつくる高性能でデザイン性に富んだ高級板ガラスと言えます。
@ 特性
1、 特殊コートされた金属膜のはたらきで、太陽輻射熱(日射)を約30%反射し、冷房負荷を軽減し、省エネルギー効果を発揮します。
   また、素板が熱線吸収板ガラスの熱線反射ガラスは、更に熱線吸収効果が加わり、一段とその性能が高くなります。
2、 太陽の熱エネルギーを反射すると同時に、可視光線も一部反射し、鏡のような効果が生まれます。しかし、100%のではないので、
   実際には、周辺の色、ガラスのそのものの色などが混ざり合った色になります。
   昼間外が明るい場合は、空や周辺の景色がくっきりと映るのに、夜になって室内が外より明るくなると、このミラー効果がなくなると
   いった変化もあります。
3、 可視光線も反射するので、可視光線透過率が下がり、それだけ眩しさをなくす防眩効果があり、また、熱エネルギーを遮断するので、
   窓際が暑すぎるといった局部的な温度分布の不均一を和らげる効果が期待でき、室内の環境を向上させるはたらきもあります。
A 品種と仕様
1、 網入・線入板ガラスの製品はできないので、乙種防火戸にする必要がある場合は、網入板ガラスとの合わせ又は複層ガラスとして
   使用します。
2、 主な色は、パール・ブルー・グレー・ブロンズなどですが、各ガラスメーカーによって他に数種類の色があります。厚みは、
   6・8・10・12・15mmの5種類ありますが、色によってはない厚さのものもあります。
(6) 複層ガラス
2枚のガラスを強力な吸湿材を内蔵したスペーサーによって、一定の間隔に保ち、周辺を弾力性のある特殊な接着剤で密封して、
内部空気を乾燥状態に保った加工ガラス製品です。
@ 特性 複層ガラスは、空気層を有していることにより、次のような特性を持っています。
1、 ガラスの間にある空気層の働きで、熱貫流率が単板ガラス(1枚ガラス)に比べて、約半分以下に減ります。
   このため、冬は室内の熱を外へ逃がし難く、夏は外の熱を室内に入りにくくします。すなわち、冷暖房の効率を高め省エネルギーに
   役立ちます。
2、 高い断熱性によって、単板ガラス(1枚ガラス)で良く見られる結露を防ぐことができます。
3、 冬に、外気の寒さの影響を受けて、窓まわりの室内の空気の温度が下がる現象を冷輻射といいますが、複層ガラスは、高い
   断熱性でこの現象の影響を小さく押さえ、室内の快適さを均一に保つことができます。
A 品種と仕様
1、 複層ガラスの品種はその組み合わせるガラスの種類によっていろいろなものをつくることが可能です。
   * 但し、重要なのは、組み合わせ方(どの種と、どの種のガラスを組み合わせるか)です。複層ガラスを使用する場所の条件や
     状態によって、その場所に合う適切な組み合わせのものを選び出します。これについては、販売店や施工業者に事前に
     問い合わせることが肝要です。
(7) 強化ガラス
板ガラスを加熱急冷することにより表面に圧縮応力層を作る風冷強化というものを施し、普通のガラスよりも強度を高めたガラスです。
@ 特性
1、 同じ厚みの一般のガラスに比べて3〜5倍の強度があります。言い換えるならば、風圧力がかかった場合の強さが、3〜5倍
   あるということになります。
2、 台風による飛来物や、人が誤ってぶつかった時などの衝撃に耐える力を衝撃強度といいます。やはり、同じ厚みの普通のガラスの
   3〜5倍の衝撃強度をもちます。したがって、人の出入りの激しいガラスドア等、衝撃の予想される場所によく用いられます。
3、 急激な温度変化現象を、熱衝撃と言います。例えば、ガラスのコップに、急に熱いお湯を入れたりすると、割れたりすることが
   ありますが、強化ガラスは、この様な場合にも、普通のガラスに比べて、約3倍の強度を示します。
4、 強化ガラスは、万一破損した場合でも、普通のガラスのように鋭い角を持った破片にはならず、細かい粒状の破片になる特徴
   持っています。このため、ガラスの二次災害と言われる、破片による人体への影響も少なく、大けがを防ぐことができます。
5、 強化ガラスは、製造した後での切断・加工は一切できません。
A 品種と仕様
1、 一般の透明タイプと型板タイプと熱線吸収タイプもあります。厚みは、ガラスの種類にもよりますが、4・5・6・8・10・12・15mmの7種類
   があります。
2、 強化ガラスは、製造後の加工・切断は一切できませんので、すべて原寸の注文生産となります。
(8) 建築用合わせガラス
2枚あるいは数枚のガラスの間に柔軟で、強靭な中間膜をはさみ、加熱圧着して作るガラスで、安全性の高い高機能ガラスです。
用途に応じて、重ね合わせるガラスの種類や枚数を選ぶことができ、種々の合わせガラスが製造できます。
@ 特性
1、 ガラスと中間膜が接着されているため、地震や衝撃、爆破などで、万一破損しても、強靭な中間膜によって、破片が飛び散るのを
   防ぐので、破片による二次的な人体への傷害を避けることができます。また、人が誤ってガラスに衝突して、ガラスが割れた場合に、
   頭等身体の一部をガラスに突込んでしまい、あわててひっこめる時に、大怪我をしたり、死亡に到るような事故につながるケースが
   ありますが、合わせガラスは、柔軟で強靭な中間膜が、耐貫通性能を高めているので、このような事故を未然に防ぐことができます。
2、 紫外線遮蔽性能に優れた中間膜を使用することにより、紫外線をほぼ99%以上カットする合わせガラスもあります。
3、 強靭な中間膜により、ガラスが破壊されても侵入される穴をあけるまでには、かなりの時間がかかります。このように、防犯性の高い
   ガラスですが、板ガラスの品種の組み合わせによっては、例えば、強化ガラスを合わせにする等によって、更に防犯性能を高める
   ことができます。また、多重に合わせることで、銃弾を防ぐ防弾ガラスも可能になります。
4、 柔軟で強靭な中間膜と装飾フィルムを組み合わせて使用することで、装飾合わせガラスの対応ができることにより、カラー
   バリエーションが豊富です。
A 品種と仕様
1、 合わせガラスは、いろいろな品種、厚みのガラスの組み合わせによるものと、カラー中間膜を用いたカラーのものがあります。また、
   中間膜に紫外線カット性能があるものもあります。大切なことは、求められた性能に適した組み合わせのガラスを選択することです。

Q&A
何か不明な点や、ご質問等ございましたら、こちらまで!
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