
新島学園/記憶に刻まれるトイレ
新島襄のことば
長らく使われた施設は、次第に汚れ朽ちていき、改修や改築をせまられるものです。この新島学園南校舎のトイレも例外ではありません。
学校で多くを過ごす生徒にとってトイレは、必ず利用するものとして役立っています。
単なる生理的現象を処理する場所としてだけでなく、新しい役割や価値を見いだすことも考えられます。
そこで用を済ませる間、少しばかり寛げ、ゆったりとした時間が過ごせる空間にしつらえることは、とても大切なのではないだろうか?
喧噪から逃れ一瞬の孤独を得る・・・・。清潔に使うことを促す教育的な配慮も・・・。
そこで『新島襄のことば』をグラフィクシンボルとして活用してみしました。
ふと目にとまるデザイン化した文字が模様になって踊り、ちりばめられて・・・。
学園生活の潤いあるアクセントとして、後に記憶に残る不思議なトイレとして。
男子トイレ
Let us be like an unpolished Diamond. Never mind of the outward rough appearance if we could have shining part within.



女子トイレ
「庭上一寒梅 笑侵風雪開 不争又不力 自占百花魁」



鹿北小学校サイン計画
三角形は難しい
丸と三角と四角を並べて、見た目上同等のボリュームと安定した並び方をそれぞれの大きさと色を工夫して提示すせよという難題を出されたことがありました。この戸惑いながら行った学生時代の研究課題は、初めてデザインに向き合った時かもしれません。そのそもそもそんなこと可能なのかと疑いながら幾つもつくってみて眼をパチクリさせながら配置しては眺め、眺めてては調整した記憶があります。
丸は究極の形で限りない魅力を持ってます。四角はスケッチブックやキャンバス、建物だって四角で構成されていてとても効率も行儀もイイ。そもそも三角形は難しい。座りが良いかとおもえば、ひどく不安定だったり、ほとんど手に負えないというのが私の印象だ。
ある日手元に届いた図面、そこから見え隠れする幾つもの三角形。いったいこの施設はどうなっているのか?
仕方ない三角形のチャレンジです。図面から導きだした不等辺三角形がこの鹿北市立山鹿小学校のサインのベースとなりました。三角形を組み合わせたさまざまなピクトサイン。ガラス面の衝突防止にもこの三角が一定方向を指し示しながらマーキングされています。クラスや他の教室、トイレ等を表示、誘導するボックスサインも不等辺の三角柱です。こちらもある方角を指し示しながら回遊できるよう各所に配置されました。どうでしょうか・・・・?やはり三角形は難しい。

 


photo: Satoshi Asakawa

ルピシア滋賀工場サイン計画
ナンバーサインと3,000枚の茶葉
 
造船技術を活かした船底を思わせるダイナミックなプラットフォームを持つこの施設は、多種多様な茶をつくりだす工場です。お茶の製造にふさわしい風光明媚な滋賀県甲賀市につくられたこの施設では頻繁に茶葉等の物資の搬出入が行われ、これらが滞りなく行われるためにプラットフォームのナンバーサインの存在はとても重要でした。庇にあたる稀な位置にサインを配置することを余儀無くされ、限られたスペースに素材感や昼夜の見え方をも考慮したスマートで視認性を考えたデザインがいく度となく検討されました。また、施設内外には、3,000枚を超える茶葉をシンボライズした模様がガラス面にマーキングされ、ブレンド等の製茶作業に欠かせない各スペースにはその工程を表すピクトサインも用意しました。時として無味乾燥な環境になりがちな工場施設を温かみのあもへとひたすら心がけたのです。


photo: Satoshi Asakawa

ゆたか第二保育園
しゃぼん玉の保育園「お話のシャボン玉」


そっと息を吹き込むと、次は風に吹かれて高く舞い上がってしまう。いったいどこまで行ってしまうのだろうか。シャボン玉は、子どもたちみんなの思いをのせて知らない世界を旅してくれる。優しく不思議な国へと誘います。
この施設は、大小の丸窓をしつらえた外光を思う存分取り込む明るい保育園として計画されました。そんなことから施設のグラフィクテーマは、子どもたちの夢をのせるシャボン玉になりました。シャボン玉はどんなところにでも漂って行き、子どもたちは大きなシャボンに入り込んだり、小さなシャボンを覗き込んだり自由気ままに楽しめます。園舎の幾つもの丸窓とそこから差し込む日差しや影と一体となって心を漂わせる不思議空間を目指しました。

photo: shinya kigure

中河原保育園 思い出ワークショップとスタンプグラフィック
旧園舎と新園舎を結ぶ創造的ワークショプ

中河原保育園は、新園舎建設を進めるなかで旧園舎の思い出をより深く心に刻めないものかと思いめぐらしました。長きにわたり多くの園児を見守ってきたかけがえのない施設とお別れすることは、とても忍びないことだったからです。そこで思い出深い旧園舎とお別れする前に、園児たちとともに幾つかの創造的で楽しいワークショップを実施することにしたのでした。
そのワークショップのひとつに「思い出の不思議な模様、カタチ(旧園舎思い出スタンプ)」があります。それは旧園舎の鍵穴、ネジの頭、ぎざぎざ、あちこちの思い出深い凸凹を探しだして、紙粘土をつかって型取りする思い出のスタンプつくりです。後日、どこで採取したか思い出しながら、新園舎で大きな紙にみんなでスタンプして遊びました。そして、このスタンプ模様が各クラスのお花のピクトサインに、花模様が遊戯室のグラフィックに、99種の模様が衝突防止マーキングとして活用されました。新しい園舎に旧園舎の面影と園児たちの行為が重なりあってグラフィックに生かされた良い例となったのです。


photo: Satoshi Asakawa

栗の木会 長昌寺保育園サイングラフィック
食べる、寝る、そして遊ぶ。

3歳にも満たない乳幼児たちの仕事は、もっぱら食べる、寝る、そして遊ぶこと。彼らのパパママたちが懸命に働いている間、ちびっ子たちもこの保育園でひたすら食べ、寝て、遊び、時々泣いて過ごしている。
ファザートには、栗の木の模様をコンクリート打ち抜き、栗のキャラクタが並んだシンボルサイン。内部は、ピンク色のキリンさん、くまさん、うさぎさんが子どもたちを優しく見守ります。

『前橋プラザ元気21+アーツ前橋』駐車場EVサイン
「数字の1はナーニ・・・」
覚えにくい数字を言葉や絵に置き換えて記憶にとどめることはよく行われます。これは、駐車場という味気ない空間を優しさのある愉快な空間へ少しだけ変貌させようという試みです。
ほとんど機能だけのこの場所をちょっとした色と工夫で、どこに駐車したかまごつくことも減るばかりか、子どもたちとの愉快な会話を生み出したり、にぎわいある公共施設への導入口として期待感のある空間を模索する試みです。人間の記憶や感じ方は多種多様で老若男女それぞれの嗜好や経験などで大いに異なります。とにかくちょっと価値観を変えて楽しんだり、認めあったりすることが大切なのです。そこで下記の様々な表現要素で不思議なキャラクタをつくり、愉快で記憶に残るグラフィックを提案しました。
1.数字(階数)で覚える
2.色で覚える
3.配置(レイアウト)で覚える
4.キャラクタ(形状)で覚える
5.イメージ(物語)で覚え る
6.組合せで覚える





photo: shinya kigure

熊本市医師会・看護学校サイングラフィック
文字組について・・・・(縦組は天と地を繋ぐ無限に連なる文字組・・・)

縦組で文字を表すのは漢字を使う国だけなので、横書きだけで自国の文字を表す人々にとって縦書きはたいそう奇異にうつることでしょう。横組の漢字や仮名が氾濫する今、サイングラフィックに視線が上下する流麗な縦組を試みることで、皆の感性をちょっとだけ刺激してくれることを期待しました。視認性を考慮しつつより縦組が際立つように、文字を長体(細長くする処理)に、しかも細筆(面相)で書いたような細身の書体を選んでいます。
ここで縦組の文字配列にこだわったのは、外観に使われる縦長のアルミルパネルから細長の短冊を連想したからです。古代の木簡が起源といわれる俳句や和歌をしたためるあの縦長な紙です。七夕に子どもたちが願いを込めて笹に下げるあれです。その短冊には漢字や仮名が流暢に書かれ、伸びやかな文字組の姿がサインに再現することができないか模索しました。英字についても漢字や仮名同様に縦に組むことでより流麗感を持たせてみました。



祝昌第二保育園
イルカ、ひよこ、うさぎ、コアラ、パンダにキリン、そして子馬
1歳にも満たないという幼子から就学前までの子たちが一日を過ごす保育園。そんな大切な時間を過ごす施設環境のグラフィックデザインを行う機会に恵まれました。
環境が幼い子どもたちに与える影響は、はかり知れないことは想像できます。地域の気候や風土、家族や指導者などの周りの大人たちや身近な兄弟やお友だちの様子。そして住環境と同様多くの時間過ごす学校や保育園等々・・・。高い天井と大きな丸窓のびやかな空間、床や壁面に木材をふんだんに使いそれだけでも居心地のよい環境に生まれ変わった祝昌寺第二保育園。少しでも子どもたちが元気に楽しく、それでいて穏やかに過ごせる場として相応しいグラフィックをといろいろ思案し提案しました。各年齢別に分かれたクラスのシンボルアニマルを子たちがハサミで切り抜いたかのような単純明快なキリンやパンダたちが大胆に走り遊ぶ。それらの動物たちにまつわる景色や物をパターン化してファブリックのように大きな壁面にしつらえました。はたして子どもたちの感覚をどう刺激しているのやら?
 

photo: shinya kigure

小布施町立図書館サイングラフィック
[まちとしょ テラソ]
やたらに大きく、しかもあちこちにちりばめられ、当然それが動き出せばいっしょに動きだし、そして重なりあったり隠れたり繋がったり・・・。
例えば町中の看板や駅のホームの文字など、物陰に隠れてしまった漢字はその一部を見ればだいたい間違いなく想像できるものです。あまりに親切丁寧な表現は、人間の想像力を台無しにしてまうものです。それぞれの空間を一時的に仕切る扉に、その場所を意味する部屋名の表記は、機能として必要です。でもそこでは、それ以上にいろいろなことが行われ、活用されるのです。この計画では、漢字を扉の表示サインとして、また意匠の素材として工夫しながら自由に配置(レイアウト)することで、文字のもつ造形的な美しさを知るとともに、その空間をそれ以上のものに感じさせてくれることを狙いました。それにしても、こんなにも拡大された文字を間近で見ることはめったにないせいか、なんだかいつも目にしている馴染みある漢字と違うような、ちょっとした錯覚に落ち入ってしまいそうです。

 


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