1999年8月29日の上毛新聞の「ひろば」に掲載された文章                         (掲載通算180号)     「さらば薪風呂」  生まれて覚えてより、入浴は薪風呂であり、肌身に優しい湯の香に、ゆとりと満 足感を感じていた。4月に来るまで追突され、バイクが転倒。入院。ギプス固定か ら補助装具などと、リハビリで6月末に退院。週に一度、リハビリと診療に通院し ている。  私の不在で、作りおいた大量の薪も欠乏、足腰不全で制作できず、ガスがまにせ ざるを得なくなった。先日を最後に72年余も親しんだ薪風呂と別れとなったけれ ど、長い思い出を振り返り感謝している。  昔は木の据え風呂で、近所の人々を呼び合ったもの。五右衛門風呂から長州風呂 となり、広い浴室とステンレス浴槽。太陽熱温水器併用の銅がまも四代目で終わっ た。昔は水は深井戸から釣瓶で汲み、バケツで運んだ。高圧ポンプもでき、工夫し て竹どいで瓶や風呂へと進化。新幹線工事で井戸の水脈が枯れ、補償を受け町営道 のお世話になる。  文明とは、人力は軽減便利になるけれど、心の思い出などは退化させる。よくも 今まで薪風呂に入れたもの、心のぜいたく感を人並み以上に持てたことに感謝し、 薪風呂に惜別。