掲載通算7号(平成元年6月30日)    ひばりさん安らかに  花金の会で、雨の日を近所の店で飲んだり歌ったりで、午前様になった。さす が早起きの私の目が覚めたら6時半だった。テレビのニュースを見ていて美空ひ ばりの死去を知り、2日酔いと重なって、1瞬目の前がくらくなった。何といっ ても日本一の大歌手であり、ひばりの前にひばりなく、ひばりのあとにひばりな しと言っても過言ではないと思う。家で育った義妹と同じ52歳。惜しみても余 りありでまったく残念でならない。  私が初めてひばりを知ったのは「のど自慢狂時代」という映画で、まだあどけ ない少女だった。「セコハン娘」を歌いながら「このハイヒールも」で草履を指 さしたのには大笑いしたものだった。何と上手な子供だろうと思っているうち、 メキメキと頭角をあらわし「越後獅子の唄」とか、映画に歌に黄金時代をきずい た第一人者であろう。ただ母親にベッタリで、小林旭との破局は「悲しい酒」を きく度に実に哀れと思った。  相次ぐ身内の不幸にもめげず、なにをやっても大御所の貫禄十分。いくら悔や んでも足りない。昭和は本当にひばりの死で終わったのだとしみじみ感じられる。 何はさておき、この不世出の大歌手に、悲しい時、つらい時、いかに歌ではげま されたことか。私には終生忘れられない。  ひばりさんどうぞ安らかにお眠り下さい。そして天国でご家族そろって来世を 生きて下さい。心よりご冥福をお祈り申し上げます。