掲載通算6号(平成元年6月21日)    生命誕生の神秘に感動  6月10日、時の記念日、はだ寒い日なので古傷のねんざがおき、早めに床に もぐって4時からのテレビを見た。土曜ワイド「海の入り日」の親娘のかっとう。 好きながら一緒になれなかった、男女と妻の織りなす愛憎。突然死した父をゆす って泣きわめく娘の哀しさ。現代ものを馬鹿にして、野球と時代劇にうつつをぬ かしていた私へ、良いものは良い、の警告ともなり、老後を考える私への誓鐘と なった。  そして圧巻は「第10回古賀政男記念音楽大賞」に酔いしれた直後にやってき た、一大衝撃であった。「驚異の小宇宙−人体第1部生命誕生」である。あのタ モリが真剣な表情でうなずきながらの聞き役。たった1個の細胞から兆をこす変 化、そして生ずる人間の神秘。3億もの精子が互いに競走し、助力し、たった1 個の選良が、受胎に成功するや、一瞬にして死滅する。恥ずかしながら生まれて 以来最高の感動にひたり、まさに野球中継も時代劇も全部意識の外にあった。  世の若人達よ、たわむれに恋をするな。先祖より受け継いだ血をさらに子孫へ、 そして未来永劫に、より良い血脈を残すために、真剣な気持ちで交際し、互いに 協力して、良い後継者を作ってもらいたい、と切望する。  もはや生産不可能ともなった後家老年には、正に後悔先に立たずである。