掲載通算3号(平成元年3月31日)    被害者の母の慈悲と言葉  高崎市中紺屋町で、カラオケの歌集をめぐるケンカで、大学生の猿谷さんが失 血死された。いとも簡単にけんかから殺し。けんか両成敗ではすまないのは、加 害者が常に凶器を持っている点で、「早く医者に連れていかないと死ぬぞ」の捨 てぜりふ。自分ですぐ連れていけば死なずにすんだではないか。あたら21歳の 青春を棒にふって、殺人者の汚名に一生苦しまなければならない加害者。自制心 のない若者の多い中でも最右翼だと思う。  被害者の母親が「せめて相手の子が立ち直って、浩一の分までよくなってもら えれば」と語っていたがなんという人間愛。自分の子を殺されて悲しく怒りたけ らない親がないだろうか。私ならとんでいってかたきを討ちたい心境になり、半 狂乱になると思う。  とまれわが子の死を見つめて、相手にのぞむ自制心と、慈悲心の高さ。  加害者の中込君よ。被害者の母が下げてくれたクモの糸にすがって泣き叫べ。 そして途中で離さず更生までのぼりつめよ。性善説を信じて、被害者の母の心に 悔悟し、息子になったつもりでこたえてもらいたい。そこに母の救いがある。そ うでなければ君は、人間として生きる資格はない。  記事を読んで、偉大な母の心にどうこくさせられ、許す心の尊さと哀れさを知 った。残された聖者のごとき母に幸あれと願うとともに、浩一さんのご冥福を心 よりお祈り申し上げます。