掲載通算2号(平成元年3月28日)    軽トラ人生は楽し  私の愛用者は軽トラである。建築業の名残なのだが、健康を害して以来、たい した仕事もしていないのに、妙に愛着を感じてしまって手放せず、ポンコツ時に もまた軽トラを買ってしまった。家にも乗用車と最新型のワンボックスカーはあ るけれど、よほどのことがない限り、結婚式場にも葬儀場にも堂々と乗ってゆく。 たまに東京に出る時など、時には高崎駅東口の駐車場におくことがある。まわり は乗用車ばかりで、金ピカの大型車の横にぽつんと置かれた軽トラを見ると、い たずら小僧がいるようで妙におかしい。他目にはどうあれ劣等感など少しも感じ ていない。  時に季節の宅配には大いに威力を発揮するし、泥道、桑原の間など、カチカチ となって細かいキズがつくこともあるが、少しかわいそうだと思うくらいで、あ まり苦にはならない。  どこへでも気軽に、ほとんど作業着のままの方が多いのだが、買い物、親類へ の用足しなど、なんでも積めるし、時にはフラッと榛名山へ散歩に出るなど、小 回りのきくことは抜群である。  私にとって妻亡き今は、人生行路の伴りょとしてちょっとした所にも連れてゆ く。時々洗ってお化粧をしてやり、ほこりまみれにしておくことはめったにない。 何事にも気取らず、こつこつとあまり残っていない人生を、カラオケを口ずさみ ながら、貧しくとも清く正しく過ごすとしよう。軽トラ人生は楽しい。