掲載第1号(平成元年2月27日) 「宅配便の仕事は楽し」  私は7月と12月、娘のアルバイトを手伝い、Y社の宅配便をもう3年も続け ている。配達はきびしくつらい時もあるけれど、人との交流に得がたいものを覚 えて、その時のくるのをひたすら待つようになった。地区の役員もしているので、 まず、地図に明るくなること、感謝の気持ちを持てること、忍耐強くなれたこと など、我が人生の師としても実にありがたい。  何回行っても留守の家などから「留守にしていて申し訳ありません」「ご苦労 さま」「ありがとうございました」などとお礼の電話をいただくと、いらいらも ふっきれるし、人に対しても自然に感謝といたわりの言動ができるようになった。 それに冷たい言葉も苦にならなくなったし、留守居の子供のしつけのしっかりし ている家、まるでなっていない家、しゃくにさわる言動など、1つ1つが教訓に なる。  東北の田舎から息子の嫁の名前で送られてきた数個の荷物の中の、たるにかい てあった「おちけもの」の字などには配達先の人と思わず笑いころげた。しかし、 しみじみと温かさが感じられ、人の世の悲喜こもごもをあらためて知らされた。  62年夏、妻に先立たれ、娘と孫と3人でよりそって生活している老年に、明 るさをあたえてくれたこの仕事を、体の続く限りやっていきたいと思う。